本サイトはJST「レーザー駆動による量子ビーム加速器の開発と実証 」プロジェクトを紹介するサイトです。
重イオン小型入射器の研究開発
研究開発の課題
本プロジェクトでは、「重イオン小型入射器」の実現に向けて、以下の課題に取り組んでいます。
- 高輝度・MeV級イオンビームの生成とビームのマニピュレーション技術の確立。
- 高繰り返し動作可能な薄膜ターゲット技術。
- エネルギー拡がりを圧縮するデバンチャー技術。
研究開発の成果概要
本プロジェクトに参加している研究開発機関(研究開発グループ)がこれまでに達成した成果の概要を、以下、年度毎に掲げます。
「QSTイオン加速」グループ
2019年度

[Ref.: S. Kojima et al., Rev. Sci. Instrum. 91, 053305 (2020)]
イオン加速については、整備を完了した「イオン用レーザー加速先行試験プラットフォーム」(以下、「イオン加速プラットフォーム」と記す。)を用いて、高繰り返しターゲットによるレーザーイオン加速試験を実施した。レーザー加熱による被加速粒子の炭素イオン高純度技術開発とリアルタイム診断装置による計測を合わせて実施した。炭素イオンの高純度化については、レーザー加熱を用いてターゲット裏面に付着する不純物の比率を大幅に抑制することができた。
また、イオン加速のためのプラットフォームレーザーの高コントラスト化整備を加速し、直交偏光波発生(XPW : Cross-polarized wave generation)方式のパルス整形技術開発を終え、2020年度にイオン加速のための照射実験を開始できるように開発を進めた。レーザー、プラズマ、イオンに関するリアルタイム計測装置については、レーザーはイオン加速プラットフォームの整備と合わせ、スペクトルやパルスエネルギーのリアルタイムモニターを導入し安定性評価に利用することで設計を開始した。プラズマについてはリアルタイム計測の高精度化に用いるために、電子分光の高速デコンボリューションアルゴリズムの開発を通じ設計を開始した。イオンについてはリアルタイムモニター可能な小型トムソンパラボラ分光器を設計、開発し実験におけるデータ取得に利用した。
さらに加速スキーム決定に必要な実験として、J-KARENレーザーによる炭素イオンのビーム加速メカニズム診断系の開発を行うとともに、イオン加速プラットフォームや京大の10 TWチタンサファイアレーザー(T6レーザー)を利用して、加速スキーム決定を視野に入れたレーザー駆動イオン加速実験を行った。
2018年度

次年度のイオン加速照射実験開始に向けて開発を進めた。
イオン加速については、パルスコントラスト性能が改良されたJ-KARENを利用し、加速スキームの最適化実験をリアルタイム診断装置開発と合わせて実施した。炭素線については、銀薄膜照射において1ショットあたり4 MeV/uの炭素線を1msrあたり10 %帯域内にH29年度に得られたものより多く発生できることがわかった。
また、イオン加速のためのプラットフォームレーザーの整備を加速し、ダブルCPAシステムの1段目の開発を終え、2020年度の夏にイオン加速のための照射実験を開始できるように開発を進めた。