レーザープラズマ駆動によるイオン加速

高強度・極短パルスレーザーによる重イオン発生

レーザープラズマ駆動によるイオン加速では、高強度・極短パルスレーザーで薄膜を照射して重イオンを発生させます。高強度・極短パルスレーザー照射により軽い電子は直ちに加速されますが、重いイオンは徐々に加速されるので、電子の集団とイオンの集団が空間的に分離する現象が起きます。

この結果、マイナス電荷とプラス電荷とが分離して「シース場」と呼ばれる加速電場が形成され、この「シース場」によって重いイオンが加速されます。「シース場」は僅か数ミクロンの距離に数百万ボルトという高い電場を発生させます。本プロジェクトでは、この原理を用いて重イオン加速器の小型化を実現する事を目指しています。

HIMAC(QST放医研)重粒子線がん治療用シンクロトロン(120m×65m)

右図はQST放医研(稲毛)の「重粒子線がん治療装置  (HIMAC) 」です。HIMACは1994年に完成しました。床面積120m × 65m、総工費は約320億円です。2019年までの25年間で12,000人を超える患者の治療に利用され、その治療実績は高く評価されています。

HIMACに加えて、日本には重粒子治療施設が6ヶ所(群馬大学、神奈川県立がんセンター、大阪重粒子線センター、兵庫県立粒子線医療センター、九州国際重粒子線がん治療センター、山形大学)あります。

今後、重粒子がん治療装置の更なる普及には治療装置自体の小型化、低価格化が必須となっています。現在、QSTでは「量子メス」構想の下に「がん治療用重粒子線(炭素)加速器」の小型化計画が進められています。

下図はその完成概念図です。2030年に、床面積20m×10m、総工費50億円以下という条件を満たす「がん治療用重粒子線(炭素)加速器」の実用化を目指しています。本プロジェクトでは、同図中、超伝導シンクロトロン内周部に位置する重イオン小型入射器の実現を目指しています。

次世代炭素線がん治療施設の概念図

更に進んで、近い将来(20XX年)、重粒子線がん治療を「だれでも、どこでも、いつでも」受けられるようにするには、既存の一般病院にも設置可能とする必要があります。その為には下図に示すように、「重粒子線がん治療器」を床面積を5m×10m程度までに小型化し、導入経費も10億円程度まで軽減する必要があります。

本プロジェクトは、最新の加速器技術を駆使して、重イオンの発生から加速、そして照射に至る全て機能をレーザー駆動で行う「全レーザーがん治療器」の実現を目指しています。

20XX年遠くない将来「全レーザーがん治療器」(概念図)
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