一般の方に

1. 量子ビーム加速器とは ~略史~

加速エネルギーの進展

量子ビーム加速器は、1931年のサイクロトロン型加速器(陽子80keV)、そして1932年のコッククロフト・ウォルトン型加速器(800keV)に始りました。当初は原子核研究に用いられましたが、その後、様々な発明によりその加速エネルギーを高め、性能を向上させてきました。

右図は、1960年から2020年の間に、加速エネルギーが時代と共に大きく増大してきた様子を表しています。赤の線はハドロンコライダーと呼ばれる加速器について、緑の線は電子・陽電子コライダーと呼ばれる加速器について示しています。また本プロジェクトが研究開発を進めるレーザープラズマ加速に関しても、電子加速とイオン加速に分けて、加速エネルギーが向上してきた様子を示してあります。

量子ビーム加速器は、現在では、原子核・素粒子という基礎科学分野だけでなく、医療(がん治療、病原検査、薬剤製造など)、放射光の発生・利用(物性、生物、材料、創薬など)、工業的利用(滅菌、殺菌、セキュリティー利用など)、農業的利用(品種改良など)、2次発生ビーム(中性子、ミューオンなど)の利用と多岐に渡り、なくてはならない装置となっています。

2. 量子ビーム加速器の課題は ~その原理的な限界~

量子ビーム加速器にも課題があります。それは加速器施設が巨大化している点です。欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器 (Large Hadron Collider/LHC)の次期計画に於いては、地球上では限界に近い一周の長さが100 kmにも及んでいます。

HIMAC(QST放医研)重粒子線がん治療用シンクロトロン(120m×65m)

また放射光や中性子等の先端基盤施設でも直径数100 m、病院に併設される重粒子線がん治療用加速器でも直径 50mに達します。 これらを小型化し、また建設費や運転経費を安価にしたいという要望が学術・産業・医療などから出ています。

既存の加速器の大きさは、1つには金属製の加速管表面での放電限界(~150MV/m)で制限されています。この限界を打ち破る加速器技術として レーザープラズマを利用した量子ビーム加速器レーザープラズマ加速器が注目され、世界各国で研究開発が進められています。

3. 限界を打破する「レーザープラズマ駆動による量子ビーム加速器」とは

高強度・超短パルスレーザーの概念図

近年発展している高強度・超短パルスレーザーを集光すると、極めて高い電場・磁場を発生できます。集光面積はレーザー光の波長程度(µmスケール)、パルスの時間幅はレーザー光の周期程度(fsスケール)が実現できます。例えば、ピークパワー 10 TW, パルス幅 30 fsを 10 µmに集光すると、6.4 x 1018 W/cm2という強度となり、電場は、6.9 x 1012 V/m = 6.9 TV/mという高い値になります。これは、金属製の加速管表面での放電限界(~150MV/m)との単純比較では、およそ一万倍も強い電場に対応します。

4. 本プロジェクトの挑戦

本プロジェクトでは、高強度・超短パルスレーザーの高い電場を利用して、ガス中、或いは薄膜表面にプラズマを形成し、電子、或いは重イオンを加速する新しい量子ビーム加速器「レーザープラズマ駆動による量子ビーム加速器」の研究開発を進めています。その研究開発を通じて、様々な先端的な加速器システムの概念を実証する挑戦を続けています。詳しくは以下の章をご覧ください。

  1. レーザープラズマ駆動による電子加速
  2. レーザープラズマ駆動によるイオン加速
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